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スラムダンクのドリーム、リアルのリアル

REAL 11 (ヤングジャンプコミックス)

REAL 11 (ヤングジャンプコミックス)

当代きっての漫画家の大看板となると、おそらくは井上雄彦がそのうちの一人であることは間違いないでしょう。
それで、もうすぐといってももう少しでしょうが、12巻が一応今秋にでるはずなのですが、その前に11巻までと11巻がとても好きなので、その件。

ちょうど、ロンドンオリンピックでバスケットボール決勝を見た

先日、なんだかんだ言って、あなたも私もそれなりにオリンピックがみんな好きで、もちろん日本選手が活躍するのもうれしいですが、単純にいいチームの良いプレイが見られるのとかすばらしいことですよね。
それで、バスケットボールの男子決勝をたまたまタイミングよく見ていて、スペインが結構善戦はしたけどアメリカの結構ドリームチームにある程度惜しくも、ある程度実力差で負けたのですが、それを見たときに、井上雄彦先生のバスケ漫画のことを少し思い出したのです。

バルセロナのドリームがスペインを強くしたように

実況がこれは何度も言っていたのですが、バルセロナ五輪のときに最強ドリームチーム、よその国からしたら同時に悪夢でもあるのですが、ジョーダンもマジックもみんな居て、本当に夢のようなチームでしたね。しかも当時は今より全体的にやっぱりそれは、マジックやジョーダンによるところとかが大きかったと思うんだけど、バスケブームみたいのはあったわけです。
それで、その最初のドリームチームを目の当たりにしたスペインがとても良い選手を後に輩出して、ここ2大会連続でオリンピックでアメリカを苦しめたりしてたわけです。

スペインかなり良いチームで、大きくてうまい選手と大きくて体をはれる選手と巧みなガード陣とシューターもいて良いチームでしたね。ナバーロとか、なんであんなん入るのみたいな3Pバカスカ決めたりしてて、驚愕でしたし、ガソルとかも最後さすがに疲れてシュート落ちたけど、それこそスラムダンクの丸ゴリみたいな感じで、大活躍でしたね。そして、その上をいったアメリカも見事でした。デュラントとか、レブロンとかすばらしいクラッチシューターだったというか。

さて、やっぱり、ブームとドリームがあると、その競技って強くなるところがあって、そこでスラムダンクがなかったら、やっぱり田臥勇太みたいに、日本人初のNBAみたいなのはなかったと思います。スラムダンクはやっぱりドリームでというか、ファンタジーで、あんな高校生たちは実際だとNBAクオリティだったりするわけなんですけど、ドリームもファンタジーもあるほうが人生楽しいですし、ブームを満喫できるというのは良いことだと思います。

それで、スラムダンクはそれでも超名作ですが、リアルはもっと名作だと最近思っています。バガボンドとかよりもリアルをどんどん見たいですよね。

リアルのリアル

リアルは車いすバスケットの漫画だ!! みたいな紹介って、万人にとっての Win-Win の逆というか、Lose-Lose というか、リアルってそれだけじゃなくて、痛烈な本当にリアルの漫画ですよね。リアルにそこかしこにある敗北や不運や不幸にどう向き合うかという話で、やっぱり、普通にはWin-Win ではないし*1、というか敗北の方が数は圧倒的に多い訳で、かといって、リアルでは負けっぱなしでは居られないという話が強烈なんですよね。

実際に私も障がいが...とか、高校退学した...とかではない方がそれなりに多数派ではあるとは思うわけなのですが、交通事故にあうとか怪我をするとか病気をするとか、もしくは何か事故に巻き込まれるとか、そういう不幸って、残念ながらそういうことは、やっぱり交通事故を筆頭に思いのほか身近な出来事なわけです。30年くらい生きてれば、残念ながら車ぶつけたり接触したり自転車で大クラッシュしたりとかそういうことが少なからず、身近な方、何人かに聞けばなんらかはあるでしょう。それくらい、以外と、なんで俺だけという不幸というのは、以外と身近で待ち構えています。

やはり、オリンピックでも登場するチームや選手、全体で見ると敗北の方が遥かに多い訳で、夢のある勝利よりも現実的にはワールドクラスのアスリートでも敗北にぶち当たる選手の方が遥かに多い訳で、それで、どうしても敗北の方が、勝利よりもはるかにリアルなのですよね。だからこそ常勝とか、とんでもないスローガンなわけです。

そして、そこに絡まる運不運、幸不幸が、そして、乗り越え方がまたリアルなのがリアルなんですよね。

敗北、不幸、絶望と幸せの、そこでリアルの11巻

REAL 11 (ヤングジャンプコミックス)

REAL 11 (ヤングジャンプコミックス)

そこで、リアルの11巻なのですけど、この巻が野宮パート多めなのです。

野宮自身はリアルのとある代名詞でもある「車いすバスケットのプレイヤー」ではないし、幸か不幸か他の登場人物とは別のかたちで、リアルの通奏低音のようになっている事故や病気や不幸の当事者ではあるけれど、かつ、一方では当事者でないだけ、野宮は複雑な境遇におかれるし、しかも正直、正直なチンピラ(笑)みたいなキャラ描写なので、その分だけ思いが伝わりやすいキャラでもあるわけです。
その11巻の話の中で出てくる、努力の発露と、天才的な才能との対決と敗北、それから絶望とはなんだの流れが、登場人物の情動が本当にすっと入ってきて、とても心を打たれた巻だったわけです。

それがなんでかというと、思うに、例えば、私たちは概ねだいたいそこそこ幸運にそこそこみんな元気で割と普通な感じの日々を過ごすのが普通だと思うのですけれど、そんな普通の日々の中で、些細なゲームから大勝負まで、とにかく、圧倒的な才能とぶちあたって敗北感を感じることがあるわけで、どちらかというと負けることの方が、ありふれた出来事だと思います。

そんな敗北感と絶望とは別のことについて、この11巻の表現が最高にすばらしくて心震えました。

そのヘッドコーチの「心の資質」の話、それから、もう一人の主要登場人物にある転機があるのですが、それが話を引き締めていて、本当に超名作巻だと思います。

リアルと宇宙兄弟と三月のライオンなんかは回や巻ごとに結構上下動の激しい流れがあって、そういう名作とリアルタイムに過ごせているのはやきもきもするけれど、漫画家さんていうのは本当に先生だ思います。

では、良い心の資質で、良い人生を。

秋に12巻が予定通りでるとよいですね。

魂の本/あえてこそ

魂の本/あえてこそ

*1:というか、本当にそんなものあるのか!?と思っている。ひでぇバズワードのようなものとも思っている。そういう楽天的な気分で居るのは大事かもしれませんが