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スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼンを読んだ!!

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

日経BPさんとこのサイトにて、http://ec.nikkeibp.co.jp/nsp/stevejobs/movie.htmlの動画集もおいてあるのが素晴らしいですね。

特に好きなというか印象的な Steve Jobs のプレゼンを三つあげると、

  1. 2007年 iPhone
  2. 2005年 Intel Switch
  3. Stanford 卒業式のスピーチ

この3つかな。毎度すごいし、あと、年が進むに連れて発表資料の方がむしろシンプルになってたりする時系列でみるのも面白いです。

この本ですが、本を読む前にいくつかジョブズのプレゼン動画を見ておいた方が良いと思います。それから、梅田さんのウェブ時代5つの定理 (文春文庫) こちらを読んでおくと、また良いかもしれませんね。

きっかけはちょうど、海部さんがスターに学ぶプレゼンテーション術 - 「スティーブ・ジョブス驚異のプレゼン」 - Tech Mom from Silicon Valleyにて紹介していたのですが、このときに妻が図書館で借りて来てくれていて、うちにあったので読みました。

単純に本だけの比較で行くと、比べるのも無茶なのですが、パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54) の方が読んで良かったというか読み物として好きだ!!

その海部さんのエントリで特に3つ気になったところがあって、本を手に取りました。割とすぐ読めます。厚くてちょっと持ちにくいサイズの本ですが、読みにくくはないです。

1. 礼賛はくどい!!

この本を読むにあたっては、正直かなり勇気が必要であった。実際に、読んでいてあまりにジョブスを礼賛する同じ文句が繰り返される部分は、我慢して読みとばす必要があった。(ジョブス・ファンの方々には、ここがたまらない部分だろうと思うので、そういう方にはオススメ。)
- スターに学ぶプレゼンテーション術 - 「スティーブ・ジョブス驚異のプレゼン」 - Tech Mom from Silicon Valley

最近は Apple 絶好調で、ネット界隈でいろいろやっているひとは羨ましい事に小金持ちでw、しかも、ほいほい Air 買った!! とかぽちったとか羨ましい人が多過ぎる!!
ですが、一方であまり Apple の呪いにうかされない方が何人かいらっしゃって、海部さんもわりと、独占や寡占よりも多様性ということで、使っているBlackberry の話題とかをエントリにされてました。それで、そんな海部さんがジョブズ礼賛は、正直めんどいってエントリで書かれていて、それはもちろん当然なのです。

...ですが、Apple好きでJobs 好きの私にも、正直この礼賛と同じのがかなり何度も出てくるのはめんどくさかったです。世にあるジョブズ本はだいたい、めんどくさいというか、本人の動画やプレゼンや冒頭の梅田さんの本のように、コンテクストとそのときの言葉だけあればいいじゃないかと、林檎くるえる信者な私でさえも思います。いや、ついつい思い出し笑いするところはあるのですけれども...。

2. プレゼンにまつわるエトセトラの効果的な手段について

ところが、プレゼンについての説明は、逆に簡潔でわかりやすいのです。

基礎部分になるプレゼンテーションのコツ、極意といったものは、とてもマトモであることもわかった。
- スターに学ぶプレゼンテーション術 - 「スティーブ・ジョブス驚異のプレゼン」 - Tech Mom from Silicon Valley

かねがね、id:hejihogu師匠の影響もあって、Mac に Switch*1して、その頃から、Jobs のプレゼンにまつわる逸話とか、ジョブズは発表会のときにめちゃくちゃ練習するらしいっていうのは以前から知ってはいました。けど、具体的に数十分のための数百時間も構想や練習にかけることを具体的に見ると、やっぱり練習って大事だなと思われます。

また、ジョブズ以外に引き合いに出されてる スタバのCEO、シスコのCEOの話題が会って、目先の小さな目標ややることではなくて、そもそも実現したい大きな理想についてぶれないことと、そのメッセージを伝えるためにも、たくさん練習をすることの大切さ、そして効率をあげるための練習や資料作りの工夫や悪い例を示すこと。いきなり機械でつくらないで紙とペンで考えようといったこと、などなど、良い事がたくさん書いてあります。具体例が多めにはいってるので、オライリーの動物本のCookBookっぽいところがあると感じました。具体的だと、真似しやすいですよね。

特に、構成のための工夫をすこしくどめにジョブズをくどめに引き合いに出しながら、こうすると効果的というのを、ポイントを押さえつつも、その効果を俯瞰的に押さえているのは良いところだと思います。
...でも、でも、やっぱり本を読む前に、プレゼンを見ておかないと、この本読むのはきついと思います!!そこでネットでひょいっと動画見られるのは良い事ですね。そして、そのリンク集を日経BPが自ら設置したのはすばらしいです。それがまた素晴らしいメッセージで Demo ですね。

あと個人的には、私はたまたま、学校でも卒業とかの発表でプレゼンを重視するところだったり、間違って学会とかで発表したり、あと最初の職場が研究開発部だったりしたので、ばっきばきのコンサルな方々に比べられると恥ずかしいのですが、少しだけそういうことを教わっていたこともあったりしたのです。
なので、やりがちな失敗の、スライド詰め込み過ぎとか、資料を読むだけだったらプレゼンの意味ない、とかこう、苦い思い出をあはははーと思いながら読んでいました。最近はあまり仕事でプレゼンもしませんが...。特に録画して自分で見るっていうのは、コッパズカシイですがよい練習方法だと思います。だいたい自分が話してる声を録音したり録画したやつを自分でみるとすごい気持ち悪いですよね。

それから、勉強会とかLTとか見てると、みんな巧みというか、そういうところでは、みんながみんな人も自分も楽しまそうとして、発表してるひとが多いと感じるのですが。それは、本当にとてもいい事だと思います。 197X とか楽しかった。みんな愉快で面白かったしね。やっぱり伝えたいメッセージがあると違います、楽しいです。開発からうどんから痛車からアナゲまで。なんでも伝えたい事を伝えるというのは、基本的に重要ですね。だからこそみんな成功した人ほど、好きな事をやりなさいっていうのだと思う。

この手の本は練習してやったら、やれば出来る!! って話で、英雄が自分に近づくような感覚を得られるのがこういう本の良いところだと思います。礼賛はくどいけど、そういう本の効能は良い事だと思います。
そういうヒーロー本では、私は断然、為末大先生の日本人の足を速くする (新潮新書)が大好きです。為末大twitterでもすごい気さくで、某テレビ番組のことで @ したら、reply されて、嬉しかったです。そんな為末大先生が登場した時のNHKの課外授業が見たいですが、ネットでひょいっとみられなくて哀しい。

3.翻訳者もヒーロー

すこし脱線しましたが、さておき...

この本に関してもう一つ良いと思ったのが、「翻訳」である。訳者はテクノロジー業界の本を多く手がけておられるようなので、用語や表現がこのコミュニティの読者向けにこなれていて、無理なく読める。
- スターに学ぶプレゼンテーション術 - 「スティーブ・ジョブス驚異のプレゼン」 - Tech Mom from Silicon Valley

どこかソリッドでクールな印象の海部さんがこう書いていたので、どれくらいのビジネス本っぽい名調子なんだろうと思ったら、これが意外にも表現がすごくカジュアルで、本文中のジョブズのプレゼン内容や、地の文の表現もかなりくだけてて、新鮮な驚きでした。
「うっそー!」とか書いてあるし。。。

ただ本当に翻訳本らしからぬクオリティで、表現はカジュアルながらも感心するところはたくさんあって、twitter や 文中に出てくるヘッドラインの作り方についての文字数についての訳者注とかは、素晴らしかったと思います。
最近本の翻訳のクオリティも高いですよね。最近だと、Python 関連の本なんかは訳のクオリティがすごく高いと思います。Python クックブック 第2版とか、エキスパートPythonプログラミングとかも。

そんなわけで、プレゼンやコミュニケーションの方法論の他に、翻訳の姿としてのある理想を見せてくれている本でもありました。

まとめ

というわけで、これはこう、ジョブズ本としては注目したところが良かったので、くどいけどある程度は、これでも鼻につかず、ジョブズのすごさを読めるとともに、練習や構成も含めたプレゼンの方法や、翻訳の素敵な姿も垣間みられる、期待よりはだいぶ上を行ってくれた良本なのでした。

  1. ジョブズ礼賛本が好き
  2. ジョブズらのプレゼンの効果的な方法論を具体例を交えて知りたい。
  3. 良訳を読むのが好き

そんな方には、間違いなくおすすめです。だけど、買うよりは借りるほうが良いかなと思います。買うんなら、パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)をセットで買う方がお得だと思います。

One More Thing 。日本人はプレゼンが苦手かどうか。

日本人がプレゼンが苦手ってよく言われるのですけど、絶対にそんなことはありません。上記しましたけれども、自分の好きな事を伝えたいという意図をもってみんなで話してた 197X は面白くて、黄金の回転!! のように何か伝えたいメッセージがあるときのパワーに国は関係ないと思います。

どちらかというと、おそらくは、企業文化とあわないんだと思う。日本の仕事の仕方だと、この本にもでてくるけど、何かを伝えるためではなくて、相手を煙に巻くための資料や発表が多いというのは、結構同意だった。

それから、もし日本人がプレゼンやトークが下手だったら、柳家喬太郎があんなに面白いわけがないし、柳家小三治の話の間があんなに抜群なわけもないし、古今亭志ん朝があんなにかっこいいわけがないのです!!

やっぱり、なにかをなしたり、伝えたりするには練習や稽古あるのみなのです。LTとかが普及したのとかよいことですよね。

*1:最近、Switch って言わない程度に普及してると思うと遠くへキタモノダ...と少し思う。