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課外授業 ようこそ先輩 為末大の回が気がふれるほどよくてスリッパで走った。

今回の、為末大課外授業ようこそ先輩...
もし、はてなエミー賞とかあったら間違いなく進呈したいです。
ドラマとしても分析としても啓蒙としても抜群でした。感動した。*1
http://www.nhk.or.jp/kagaijugyou/list/list20078.html


小学校5年生の普通のクラスの子達の100mのタイムを
1ヶ月で1秒縮めるというのが目標で、そのための練習をする。
目標もふるっていれば、その練習や対策もふるっています...

1. スリッパで速く走る練習をする 1日15分これを3週間。

この練習の後タイムを計る.この段階で平均して0.4秒くらい速くなる。
子供達もやる気になる。いけるんじゃねいかってワクワクテカテカです。

日本人は欧米人に比べると猫背気味なので、太ももをあげて走ると
どうしても骨盤が上下してスピードが遅くなるとのこと。
そこで日本人は忍者みたいに走る方がタイムが伸びるという分析結果が紹介されます。

これは為末先生すばらしい分析なのだった。特徴や体質を踏まえて策を講じる。
そういえば、柔道とか剣道とかもすり足推奨なのですよね。(うちの父親柔道経験者なのです。)
あとここで、いい先生だ...と思ったのが、忍者みたいにタタタっと走るイメージをクラスのみんなに伝えてあげると小学生の子達がわりとうまくできるようになっちゃう。これこそコーチング。
ちなみにスリッパで脱げないように早く走るには、足を前にだすようなイメージが必要でした。

2. 1のVTRを分析して為末先生がその子に必要な対策をする

A. 左右のバランスが悪い子はトランポリンで同じところで飛ぶ練習
B. 歩幅が狭い子はレーンにペットボトルを広め等間隔において走る練習
C. 足の回転の遅い子は後ろ向きに走る練習
これまた何という教育と思った。
抱えてる課題はそれぞれ違うのだから、違う練習をするのです。
1の練習ていうのは基礎強化なので成果もわかりやすいし、結果もでやすいのだけれど、
この段階の練習は良い型のための癖つけというか矯正のための練習なのですね。


ここでひとつ重要なのは、いずれも矯正なので、悪い癖がでないようにちょっと強制の仕組があるのです。
- トランポリンの上だから、バランスが崩れると落っこちて失敗
- ペットボトルがおいてあるから、それを跨がないと突っかけて失敗
- 後ろ向きで走る練習だから、足が出ないと転んで失敗


だから、ちょっとストレスだと思うんです。こういう練習。
でも、その前の1の段階で結果が出てワクテカになってる小学生達なので、
できなくて悔しいときもあるけど、がんばってこなす。そもそもがこの手の練習はじれったいわけだけど..。


この2の練習を踏まえて、同じくタイムの記録会を行う。
すると、もちろん、苦労したわけだから、1のときと同じようにタイムが...
...なんと...伸びない!!
それどころか、遅くなる子もいる。そしてへこむ。少年たちの表情も少し曇る。


これまた、すごい。
これまでの段階では、その子の癖があったとしても
それで行けるところまでの、いわば局所最適で0.4秒程度は縮めてこれた。


ところが、2の段階では1秒の目標に向けて根源的な修正のため、
この壁をもうひとつ乗り越え、もっと最適解に近づくために、自分のやりやすいところから、
新しく、根本的によいところをめざさなくっちゃならなくなる。
そこで、ちょっと悩むし、自分で考える。(ここでくじけないのは、1の成功体験が生きるからとも思う..)
そして、1と2の練習を続ける。

3. そして1ヶ月目 - 記録会の日

為末先生は最後にびっくりな仕掛けを用意する。
記録会に父母やギャラリーを集めて、みんなを軽い緊張状態かつ興奮状態に。
先生も生徒をあおって、円陣をくんだりして、いい心理状態に持って行く。*2
走る直前には選手紹介と過去のタイム、そして目標タイムをアナウンスして、
ヨーイドン!!

4. 結果

クラスの半分の子が、目標の1秒短縮を実現する。
ゴールとともに為末先生も我がことのように一緒になって喜んでた。
その一方で元々足の速い子や、緊張に弱かった子は少しだけ1秒の目標に届かない。
そんな子達に対しても、為末先生は喜んで讃える。
- けれども、1秒に足りない子達はやっぱり悔しい表情だった。
ちなみに平均してクラスで、ひとり、0.7秒は記録が縮んでた計算。(これでも十分に驚異)
# もしクラス全員リレーがあったら、0.7 x 30 で 21秒も縮んでる!!

5.結び

為末先生の体験に基づいて、いろいろな大会でのお話や、
がんばれば達成できること、達成できなくて悔しいことを忘れないでね、と。
そして、自分の限界をこえることの話をし、
最後に、みんなとひとりずつ握手して結び。さっぱりと感動。*3


為末ってやっぱりすごく頭がいいんだなと..。
自分でいろいろな課題にぶつかっては、問題を分析して、その対策に取り組む。
なんにせよ問題っていうのは、その問題がわかるのがはじめの関門で、しかもそれがとっても難しい。
筋トレすればタイムがよくなるだろうとかが実は違うときもあったりね...
問題にぶつかるたびに、がんばって考えて乗り越えてきて世界陸上のメダリストになったんだよな..と


素晴らしいコンテンツは賞賛されてしかるべきなのです。
そして、がんばれ為末。


おまけ.. 自分の体験談はこちら
うちで使っていたサーバのHDDが故障してしまったのでここに書きます。

 私も少しだけ似たような体験があって、小学生くらいまでは体がかたくてしかもよく食べる子供だったので、太ってたし運動がかなり苦手だった。けれども高学年くらいから背の方にとられるようになって、足が速くなった。
 徒競走はビリが定位置だったのが小学校の最後では3等賞になれるくらいに、中学ではバスケ部で鍛えた事もあってリレーの選手になるくらいになった。速く走れるのは本当に楽しかったけど、元々がどんくさかったから、中2くらいで一度伸び悩んだことがあった。
 そのときにマイケル=ジョンソンが出始めた頃で、胴長短足の走り方でってネタになってたけれど、似た体型w の自分にはあの走り方がすごくヒントになって、壁を突破できたことがあった。
 それと、中学のときの体育の先生が根性ではなくて、コツの体得や科学的な根拠に注目して色々教えてくれた。走り幅跳びの練習で、1時間ただ体育館のステージからエバーマットに背中を反りながら飛ぶ練習をしただけの体育の授業があって、その日は背筋がいたかったし、つまらなかったのだけど、次回に記録会で、走って、踏み切るときに、前回を思い出せとだけ言われて飛んだら30cm 記録が伸びたことがあったのです。
そのときのことを思い出して、また少し微笑ましかったのです。



# 一方、嫁は王様のブランチを見ていた...orz


# NHKLivedoor みたいなもんで、上の方で騒動があっても、
# 現場の人たちは立派に仕事をこなしているのです。ある良心をみた。
# それから、NHKの技研公開は面白いので、機会があればみなさまどうぞ。
# (特に何年か連続で行くと、地味ながら着々と成果が進んでて面白いのです)


日本人の足を速くする (新潮新書)

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*1:本当に涙でた。

*2:動物のお医者さん犬ぞりシーザーの俺はやるぜ!!状態

*3:俺、全力で涙目。