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不条理とさまざまな種類の自由についての物語として読んだ - 村上春樹 / 海辺のカフカ

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

世間は 1Q84 BOOK 3 とかで盛り上がってたりするわけですが、私と言えばそもそものきっかけ*1は、RADIOHEAD海辺のカフカ ということもあり、海辺のカフカがよみやすいというオランダのフルクト村のノエルさんの友達の海の生き物とか、まきなさんからの教えもありまして、それで海辺のカフカを読みました。

...読みましたけども、こ、これで読みやすい方なのか。

「やれやれ。」僕は言った。つづいて、「正直、海辺のカフカはよくわからないわ。すこし、もんにゃりするところがあるの。」みたいな事を妻が言った。ちなみに、ケースケもウナギは好物です。牛肉も好物です。知事さんは大変だと思います。がんばれ知事さん。そのまんまがんばれ。

余談はさておき、象の消滅は実に素晴らしい短編集でこれは本当にすごかった。そして、アンダーグラウンドもこれまたスゴ本で、とても印象に残っていて、満を持してってほどでもないけど、長編の小説に入りました。RADIOHEAD の KID A やベートーヴェンとかのあたり、示唆的に過ぎるかも知れないですけど、そういう数々がまた読みやすさに拍車をかけていたりはするのかもと思いました。村上春樹作品って、あるあるwwってくらいに音楽のところがいやにわかりやすく具体的というか、そういうのは長編でもそうでした。

片方向を双方向から各描写とそれぞれのそれぞれなきっかけ

眠れないから海辺のカフカを読んだのか、海辺のカフカを読んだから眠れないのか。それは、わからないけれど、少しずつ進んで昨夜、というか今朝すべて読み終わりました。
村上春樹の物語は大島弓子のファンタジーな方の漫画を、少しぐしゃぐしゃにしたような展開のものが多くて象の消滅は、いろいろ丁度よかったりしたのですが、超変長編なだけはあって、みっしり盛りだくさんでした。同時進行する物語が少しずつ交差してほぐれて、読者にゆだねるみたいな構成に読後感は少し不思議な印象だったのが、一番強く印象に残っています。それから、ファン・デル・ノエルフルクトさんが言っていたのですが、ホシノちゃんが居なかったら、置いてかれる印象があったかもしれません。あと、えろいですね。

海辺のカフカはそのまま、自由と不条理の物語

この本、裏返しというか、こちらが向こうを見ている。向こうがこちらを見ている。というような、確認の強調がなんども出ていて、そうじゃないときは、世界は割と片思いや裏返しで出来ているような、そういう漠然とした印象を抱いたりしてしました。GoogleTwitter とかがすごいのは、前提が両思いではなくて、片思いとか非対称とか逆とかそれぞれとか、不均衡に注目したりしたことだと思うのだけど、海辺のカフカも、そのあたりがとても気になりました。
私たちが自由だと感じるか自由じゃないかと感じるのは自由だし、自由って比較することもできないし、私たちは職業選択の自由アハハンとかなのだけど、この本に出てくる少年やナカタさんや他の登場人物が、自由や不条理といかにして向き合うか、それぞれの物語なのだな...というのがひとつ。さて、私たちはどこからどこまで自由なのだろう、自由にできるのだろうね。

きっかけ

フルクトさんは、「取り戻せない」という表現をつかっていたのだけれど、たしかにがっちゃんと変化するきっかけを境に、いろいろなことが前と変わってしまう、しかもパラレルパラレルパラレルパラレルに。と、この世界観はなるほどで、後期の方がそこに少しやるせなさとか深刻さとかが強めに入ってるのかもしれません。村上春樹が好きな人の気持ちがわかる程度には楽しく読んだと思います。

なんかもやっとしてるのは、ネタバレじゃないけど、物語の中身をあんまり具体的に書いてしまうのは野暮だと思っているからというのと、普通にこの本がカフカを海辺で読んでるように2重にもやっとしてるところがあるからかしら。

おすすめ

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

今のところ、村上春樹で本当におすすめなのは、この短編集です。私は日常のちょっとした非日常とか、ささいな話がわりと好きなのもあって。

それから、震災やアンダーグラウンドの以前以後で、この人は作風が結構変わったみたい。それこそ RADIOHEAD の 1st と 3rd 以降くらい変わったのかも知れない。なんというか、私のようなマイペースなはてなダイアラーよりも、アメブロとかでおしゃクソ野郎みたいな人の方が、特に村上春樹前期とか読むのかななどと思っていましたが、偏見でした。ごめんなさい。