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続いて、「不運のすすめ」米長邦雄、「勝負心」渡辺明なども面白いですよ

電王戦 Final も終わった今、ボナンザVS勝負脳 ――最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21) 保木邦仁, 渡辺明 を読み返してみると面白いですよ - くるえるはてなくしょん の続きみたいな形です。どちらかというと羽生さんより若いけど競馬が好きで次代のエースの永世竜王資格保持者で競馬も好きだけど割とクールでドライな感じもありそうな渡辺明氏と、どちらかというと古き良き時代感があって愉快なキャラでありつつもきめるところはびしっときめてきて電王戦についても道筋をつけた感じのある米長氏の本を同時に比べて読んだら面白いかなとか少し思いました。将棋指しの本、面白いんですよ。偽らざる本音みたいなの書いてたりとかと勝負の裏側や将棋指しと言ってもいろんなかたがいらっしゃるとか。

例えば、今、名人戦をやっていて、羽生名人に挑戦しているのが、この間NHK将棋のときに、橋本八段の二歩のときのお相手で準優勝でもあった行方八段なのですが、その行方八段...

音楽ではロックンロール好きで、アーティストではthee michelle gun elephant(以下「ミッシェル」)や中村一義レディオヘッドナンバーガールなどが好み。特にミッシェルについては活動中は足繁くライブに通った程のファンである
 -- http://ja.wikipedia.org/wiki/行方尚史

これはガチですわ...。とか、意外な一面あるんですよね。

まずは米長氏の「不運のすすめ」

自他共に認める性豪として知られるだけに、前立腺癌を宣告された後、全摘手術を躊躇したことが結果として転移に繋がった。その心の機微が著書「癌ノート~米長流 前立腺癌への最善手~」に記されている。
-- http://ja.wikipedia.org/wiki/米長邦雄

米長氏は惜しまれつつこの世を去りましたが、人生観とかたってるキャラとかなのがあり、いろいろ面白いです。性豪というのは、ちらっと知ってましたが...普通に本書中で、自身が十段のタイトルホルダーではあったが不調の波を感じていて、一方挑戦者の中原名人は好調という最中、そのまま戦いに突入するとスランプになると思われた米長氏、

それまでの生活の流れをちょっと変化させてみることにした。十段戦の間、酒は飲むが、女性からの誘惑には乗らないことにしたのである。
-- 「不運のすすめ」 p.20

普通の人だったら、キリッみたいな内容なのですが、実際、これもあってタイトル防衛をして、こういかにして不運や不調とつき合うかみたいな事例や、米長哲学や、もろもろの紆余曲折なんかも普通にこういうのもあるのかみたいに読むと面白いと思います。文体もカジュアルで、内容もカジュアルで面白いです。

もうひとつ面白かったのは、

頭の中をからっぽにすると、すっきりとした明るい気分になり、スランプであること自体をわすれてしまうものである。
現役時代の私は、スランプに陥るとスケジュールをやり繰りしてラスベガスへ行き、ギャンブルをしながら、日本ではとても人前で口にできない言葉を絶叫し、連呼していた。
-- 「不運のすすめ」 p.26

将棋の名人になるひとですらこうなのです!!

こうどうも、この国においてはアスリートとかにやたらめったら品行方正を求める傾向がある一方で、芸人や少し前の将棋指しとかにはなんというかやたら寛容というのがあったりしますし、こうお互いが、別にラスベガスで放送禁止用語を連呼する必要はないと思いますが、もう少し適当でもよいのかなと思います。息苦しいことばっかりなくらいだったら豪快なお話があっても良いですよね。

まあ、米長氏、ちょっと遠くからだと愉快で変なおじいさんですみそうですけど、近くにいたら絶対ある程度めんどくさくて、近くの人は大変だったろうなとも思います。面白い人とかだいたいそんな感じなところありますね。

まだこの頃はある程度のどかな時代でしたし、盤外戦みたいなのもあった頃なので、なおさら大変だったかと。

でも、こういう人がいるかいないかは大きいみたいなのも真実として。

もう少しモダンでクールある意味殺風景な最近の将棋界隈の風景と、競馬へのあつい愛が迸る渡辺明氏の「勝負心」

勝負心

勝負心

永世竜王なので、エターナルドラゴンキング...みたいな、羽生世代の次の世代のホープと目される渡辺氏の本ですが、こちらはもうすこしモダンでクールです。米長氏が不調や不運について語る一方で、渡辺氏は、

「調子」という概念は、私にはありませんん。全てが実力です。
-- 勝負心 p.96

という具合。

こちらは上記の米長氏のときよりも、もっとずっと最近のお話になります。2013年の本です。この本を読むと将棋の世界も時代がいろいろ変わった感じがあります。

俗にいう羽生世代あたりから将棋とまつわる文化がいろいろ変わったこと。あと渡辺氏、上記のように全編的にリアリストでクールな印象があるのですが、そのなかで、おやつのお話がちょっと面白かったのと、渡辺氏、競馬が好きというのは有名ですが、この本でも随所に迸る競馬愛で、その辺りが楽しかったですね。
その観点から、対局についてのミスに関しての考え方も興味深いです。

三浦八段が負けたときの電王戦のことも本書中に出てきます。コンピュータ周りの話題も米長氏の本と比べて現代的な話題が多いです。渡辺明ブログも頻繁に更新されてたり、ボナンザとの対局の件もあり、そういう風なことに慣れている印象はありますね。

最近の将棋については盤外戦みたいなことよりも、普段の対局や、事前の研究などが重要ということが特に言及されてたり、あとは特にプロ棋士同士の対局なので、どうしても勝ったり負けたりはあるということにも触れています。
そのなかで、強い棋士は負け試合も良いみたいなのがあって、このあたりは先日の電王戦と絡めて考えると面白いところで、将棋の対局も、オーケストラのコンサートみたいなもので、本番前に練習やリハーサルや指揮者のいろいろがあってむしろそちらが大事みたいなところがあって、将棋の対局についてももちろん対局中も大事ですが、最近では事前の準備も相当に大事なんだなというのはいろいろと伝わるところがあります。「研究が仕事で対局は集金」みたいな言葉もあるそうで、いろいろなことがそうなっていくというのが自然なことなのかなとも思います。

そう考えると、私たちがゆるい感じで将棋のゲームをやる勢いで考えがちですが、電王戦とかのプロ棋士パワーはもちろん対局本番中にもありますが、それ以前にもいろいろと対策なんかが考えて、それも含めて実力みたいなところはあるのかなとは思われました。実際、電王戦 Final ではそういう展開になりましたし。始めの東大の計算機クラスタとガチで切り合いになったみたいな三浦八段はちょっと今考えると、あまりにも...みたいなところがあります。

何事もこう煮詰まってくるというか、突き詰められてくると、異常にシビアになってくる感じがあります。将棋の試合も押し合いへし合いねじり合いみたいな対局もあるにはありますが、一気に形成決まるみたいなところがやっぱりあるのかなと。これがプログラムになったらなおさらな感じはあります。

将棋のゲームの特性から人同士の対局でもミスしないことが重要みたいなことがあったり、ミスや弱点があればそこを間違いなく咎めて行くみたいなところが先鋭化されるのはどうあっても仕方ないところはありますので、今回の電王戦みたいになるとそういうのがやっぱりいろいろ明らかになるのだなと思われました。

プログラム側の方は、ただ一直線、これは将棋に限らず何でもですが、悪いとき、ミス、負けてるときの対策や改善については、もう少し面白そうなテーマがあるのかなとか思います。恐らく序盤から形成がじわじわ良くなるみたいなのは得意そうですが、羽生マジックみたいなのとかだけ探すとかも面白そうな印象が。

... 対して専門家でもないのにすみませんが

まとめ

いろいろと物議をかもしましたし、運営や規則によってワリを食ってしまった人もいましたが、それでも、ただ見てるだけからすると電王戦がとりあえずあってよかったなと思うのは率直なところです。今回みたいに団体戦じゃなくても良いから時々は企画でプライドのワンマッチみたいな感じでもよいからなにかあると嬉しいと思います。

あとはニコ生とかでも将棋中継あったりして、なんとなく気に留めるようになりましたし、図らずも米長氏が画策してた将棋ファンを増やすことみたいなのが、不思議な形で不思議な層に対してうまくいってることが、米長氏すごいなぁ...と思います。伊達にダブルピースしてないですね...

では、良い人生を。

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ごろごろどうぶつしょうぎ

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なお、わい将、子どもにときどきどうぶつしょうぎで負ける模様。