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失われた30年を取り返せるかもしれないこれからの3年、あるいはスマートフォンよりシーフードスマート /「あんなに大きかったホッケがなぜこんなに小さくなったのか (角川学芸出版単行本)」生田 與克著


図書館で借りてきました。

「たまらねぇ場所 築地魚河岸」生田與克 - 有り難い普通が、普通にそろそろまずい - くるえるはてなくしょん や、日本一うまい魚の食べ方 と 日本一うまい魚のごはん - くるえるはてなくしょん など、いくつかの著作がある、マグロ問屋の3代目にして、実家の方はうなぎ屋さん、あの松木安太郎氏と親戚で、いかにも江戸っ子な魚屋さんキャラの生田さんの最新作は、KADOKAWANGO の学芸出版からのとりわけ真面目な話題でした。

私が魚をさばけるようになったのは、魚をさばく―築地魚河岸直伝 (生活実用シリーズ NHKまる得マガジンMOOK)のおかげということもあり、私淑しているというのに近い感情があります。あと私の周辺では、水産ではなく土建関連ですが、現場屋さんが多いということもあり、なんとなく親近感が。なお私は IT土方みたいな感じな模様で、どーもすみません...。

真面目な話題ですが、今回も読みやすく江戸っ子語り口調そのままで書かれた文章です。人によっては鼻につくかもしれませんが、「江戸っ子は五月の鯉の吹き流し」です。江戸っ子とか、現場屋さんはだいたいそんな感じですよね。

今回のテーマは水産資源

ときどき、はてブで注目されている 勝川俊雄公式サイト の勝川先生なども取り組まれている、日本を取り巻く水産資源の緊急事態について、本当にわかりやすく書かれた本ですね。
勝川先生や生田さんのこの問題への取り組み、池上遼一サンクチュアリ方式感が少しあります。水産資源にまつわる危機的な現状に付いて様々な問題提起がなされているわけですが、「なにがどうまずくて、どうすれば良いのか」ということについて、わかりやすく書かれています。

本当にかいつまんでまとめると「ホッケが小さくなったり、水産資源が枯渇したり、水産関連でみんなが損してるのはみんなのせい。3年くらい我慢しよう」というお話です。もっとかいつまんでいうと「お魚がとれなくなったのは、明らかに、とり過ぎ、売り過ぎ、食べ過ぎだから、ちょっとどうにかしよう」というお話です。

ホッケが小さいのは北海道じゃないからだと思っててすみません。

うちでは、父がそんなにほっけが好きではないということもあって、そんなに気にしてなかったですし、北海道と東京でくらべたらそれは北海道の方のイメージでいたらだめだよなと食関連で思うことは結構あって、あまり気にしてなかったのですが、確かに、それでもホッケは小さくなった印象や実感はあって、それだけでもこのタイトルについては成功していると思います。築地で見るキンキとかが辛いです。個人的には。

このどうしてこうなったについて、わかりやすく書かれていて、その他にも、問題は一時話題だったウナギ、マグロなどなど、ホッケに限らず、漁業と水産業の現状と問題点、海外の先進事例、日本でもうまくいっていることなどが、リズミカルに語られてて楽しいですし、問題点がわかりやすく...、わかりやすい問題点だからなおさら読みやすくイメージ出来る形です。

今、日本でみんな(これは漁業関係者、飲食関係者、販売、消費者、食べる人全部)がやってることは、寄生獣よろしく、この種(お魚)を食い尽くせ状態で、チキンレースかつ囚人のジレンマゲームをやってる現状というのは、上記の勝川さんのサイトを見た方や、この分野に明るい方ならすぐわかるお話だと思います。

「近代設備で皆殺し」の話題以外にも、本当にわかりやすくどうしてそうなってるか、というか、どうして「日本だけ」そうなってて、一方で、ノルウェーとかはどうしてうまくやれてるのかということを結構ガツンと書いてます。子どもはさらってくる、産卵場はあらす、未成熟でとっつかまえるということについての対策が早かった諸外国と日本の差が多角的に数値としてもはっきり書かれています。

日本の漁業関連については、「失われた30年」らしいです。そして、図らずもわかった「3年くらいで水産資源はある程度回復する」という事実も。
この、手を打てばどうにかなりそうで、しかも手を打つ内容も方法も既知。ちょっと痛いけど、今やらないともっと痛い。みたいなよくあるケース。みんなわかっているのにやらないやれないという、最近だと労働関連の問題とかが特にそうだと思うのですが、わからないはずがないことを、わかっているのにやらないやれないっていうのはずっと深刻な問題としてある気がしています。私も私たちもよく日本人が特に苦手とする問題というか。

日本が地理的にこれだけ恵まれてるのに、なぜそれを毀損し続けるのかという点について当事者だからこその誇りと辛さとがまんべんなく書かれていて、もっと学術的に知りたくなったら勝川先生の発信されている内容にあたるというパスがあるのも良いですね。

面白くてためになるという点では本当におすすめです。あとおうちでごはんが好きで、ネットのおいしいとか食べログとか好きじゃない人にもおすすめです。牛丼やのうな丼とか好きじゃない人にもおすすめです。

末端の消費者が変なもの買わなければ、お店は売りませんし、売れないなら穫らないです。ひろゆき氏も個性的ですが、変なものにお金を使うのすごくいやがっていて、その原理については、もっと注目されたらいいなとか思います。

逆に、高く売れるならそっちを穫って来るし、高く売れるものをお店も仕入れるし、お客さんも違いがわかる方が素敵ですよね。

おいしいものをちゃんと自分でおいしく頂いて、適当に死ぬのが良い人生だと思います。築地まで来てスマートフォンばっかりみてないで、おいしいものをちゃんと頂きましょう。

詳しくは

是非、手に取って読んでみてください。図書館でもよいと思います。

では、良い人生を。