iMac という名前を提案したケン氏のThink Simple を読んだ話
- 作者: ケン・シーガル,林信行,高橋則明
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/05/23
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それで、ほぼ本人によるらしい自伝的な伝記としては、
すでに、これらがありますが、私が興味を持っていたのは、冒頭の本の方で、妻がひょっこり本を借りてきたので、読んでみました。
あの有名なスタンフォードの卒業生向けスピーチをみたときの思い出にあんまりよけいなものがついて、それで、幸せになるかといったらそうでもないかなと思われたので、そんなに穿り返して人の半生とか知らなくてもいいかなと思うし、手元にMacやiPhone があることで思うことのほうが遥かに大事かなと。はい。
それから、あと、冒頭の本が気になったのは、それなりの Apple ユーザならおそらくは一度は聞いたことがあるであろう、賞賛と皮肉と嫉妬がいりまじった
「広告代理店がうっかり計算機をつくってるのが Apple」
みたいな言葉があるのですが、そんな Apple とあと、ほかの数社とも仕事をしていてその例も随所に登場しますが...、そんな広告代理店の中の人にして、Think Different のキャンペーンの重要人物にして iMac の名前の提案を行ったのが著者のケン氏なのですが、そんな中の人でありつつ外の人でもあるような、一緒に仕事をしたという、そういう視点の人の本の方が興味があったんですよね。
どうにも Steve Jobs の復帰以降の Apple にはやっぱりあやしい現実歪曲フィールドがあって、中の人ももちろん、ライターもよっぱらったみたいになたったりするし、ユーザもだいたいらりってるしで、そんななかで、本当にパートナーの広告代理店の中の人はどんな風に仕事をして、どんなことがあったのかって、ちょっとおかしくなってるのとは違う立場で物事を見られたはずで、特にそれに興味がありました。
今、Jobs が亡くなり、ちょっとプロダクトが微妙になっていて、そのいずれか、もしくは両方が影響して、現実歪曲がかかりにくくなってる人と、まだ Apple を信じてる人といるような状況に一時よりはなっていますが、全盛期にも信じつつ猜疑心もあり、しかも提案もするし一緒に仕事をするっていう人の話は面白いだろうと。
んで、それなりに面白いです。失敗してるのは意外と本のタイトルと目次ではなかろうかと、少し思います。
やっぱり、単純に面白いのは MacMan になりそうだった iMac の名前の話
もうケン氏が出版記念で来日講演を行った際に語っていたようなのを、ちょうどネタフルのコグレさんのエントリ( 「Think Simple」刊行記念セミナー“クリエイティビティとイノベーションを生み出す熱狂的哲学”レポート )にて、あるので私も書いてしまいますが、すんでのところで、iMac の名前が MacMan になるところだったというエピソードでしょうか。
Jobs がいたくお気に入りだったみたいで、あやうく iMac は MacMan になるところで、なんか一見しても、これはちょっといけてないとおもうのですが、Jobs がどういう名前にしたいかで設定した条件が書中にあるのですが*1、それを軽やかに自らぶちこわしていて、だけど、本人は MacMan がいいと言っていたというところの回想シーン。そこだけでも読む価値はあると思います。結果として今 iMac っていうのはみんな知っていて、それは現状みてもいい名前なわけで、結果知ってても、その MacMan のくだりはスリルとサスペンスです。
Apple の仕事のすすめかたは本当にとてもすばらしい
それ以外でも、おもしろいエピソードはいくつかあります。
どうしても比較してしまうのは、大企業の仕事の常識と、Apple の常識が全然違うこと。Apple 以外の会社の仕事の進め方の例をケン氏は引き合いに出すのですが、普通の大企業の進め方というのは、アメリカも日本もあまり変わりませんし、うっかり普通の大企業でお仕事をされたことがある方には、いろいろ重ねてため息がでそうなエピソードが山積みです。Apple 的なものから、大企業的なものまで。いろいろ違うので。
特に、物事の決め方や、会議の出席者の例、名前へのこだわりなんかは、好対照ですかね...
あとは、本書では少ししか触れられていないですが、エレベータに一緒にのって降りるときにはクビにされていたとかいう都市伝説がある Apple や Steve Jobs ですが、決断から行動まで早くて速いのは、Jobs だけじゃなくて、Apple 自体がそうしようとする仕組みを組織としてもっていることというのが大事で、ともすると少年漫画みたいにジャジャーンとヒーローが助けにきて、ましてや、Jobs みたいなヒーローだから云々... ではなくて*2、チームの時点でそうなってるっていうほうが大事です。
日本でも話題になりましたが、
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Apple が世界最大のスタートアップだって言って仕事をしてるのはすごいし、ある程度常識破りってそういうところにかかってきてるのだと思います。普通なら普通の成功失敗だし、普通じゃないなら普通じゃない成功失敗をするだけで、普通なんです。私も普通のブロガーですたぶんって、たぶん、はてなダイアラーな時点で普通じゃないですかね。はい。
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と、脱線したので、次のトピック...
試合が終わればノーサイド、次の日の試合はまた別の試合
それから、ケン氏が語る Steve Jobs の特徴で、残酷なまでにはっきり伝えるとかは、みんな心にとまると思うのですけど、それより面白いなと思ったのは、それはそれとして、逐一、心と頭をリセットして、また次回の打ち合わせができることみたいなくだりがあって、それがとてもよいなと思いました。
特に世界でも私たちというか、アジア系が特に...なんですかね、なおかつ日本ときたら...なのでしょうか...気候のせいか、歴史のせいか、どうしてもウェットで粘着質で根に持つタイプが多いし、みんなの黒歴史スパイラルのスパイラルみたいになって、みんな不幸みたいなのがあって、もう死ねばいいのにみたいになったりしがちで、いや、それ私だけか...とか少し思うんですけど、 けど、そういう、とにかくそういうくどい感じというか忘れられない感じとかあると思います。そのくせ総理大臣とか常にダメだしされるし、あんだけダメだししといて、もう3人前の総理大臣覚えてないとかで、まあいろいろ面白いですが、まあ、それもやっぱり私だけですかね...。
ですが、Steve Jobs はどうもある程度すぱっとリセットがかかるみたいで、先のMacMan も結局 iMac になったわけで、ある程度はみんなが気を取り直して次とか、めんどくさいものをやめるとか、やりたくないことはやらないとか、そういうので幸せになることは確かにあるので、ジョブズのようなヒーローが求められる!! とか、Apple のようなイノベーション!! とか、垂直統合プロダクトとプラットフォームこそ必要!! とか、何も直せないクレイジーダイヤモンド社のたわごととか、最近発狂小町おじさんと化してる日経もろもろはほっといて、組織を変えるとかは大事ですが、ある程度はみんなが気を取り直して次とか、めんどくさいものをやめるとか、やりたくないことはやらないとか、そういうので幸せになる方がいいと思います。
大事なことなので、かなり2回言いました。
まとめ
と、そんなわけで、Apple のもろもろをいろんな方面、いろんなプロダクトやいろんなキャンペーンからみることができるちょっとユニークな書籍の紹介というか書評エントリですが、途中からなんだかわけわからないですが、私らしくていいと思います。少なくとも私がいいと思ってるからそれでいいのです。
肝心の本の内容で、もうひとつとても面白いのがインテルのもろもろなので、そちらも注目して読んでみると楽しいと思います。PowerPC から IntelMac のくだりを知ってればというのも少しはあるのですが、単純に引き合いに出されている Intel 社のエピソードの数々が面白いです。Pentium M がもしかしたら... とかね。
あ、あとですね、というわけで、ひさびさにエントリ書いたら、なんかいろいろノウハウを忘れるは、マシンは違うわ、画面も違うわで、とても長くなってしまいました。そのあたりもおいおい。
では、よい名前で、よい人生を。
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