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サムライブルーの料理人と黄金時代

サムライブルーの料理人 ─ サッカー日本代表専属シェフの戦い

サムライブルーの料理人 ─ サッカー日本代表専属シェフの戦い

なんというか、舞台裏の暴露本とかそいうのではなくて、淡々とだけど少し暖かく、ですます調で書かれた丁寧な本です。福島のひとはそういうひとが多いんですかね。

タイトルを見てわかる通りなのですが、サッカー日本代表帯同シェフで、Jヴィレッジスタッフの西さんによる、ジーコオシム、岡ちゃん、ザックとちょうど、日本でワールドカップが開催されたりして、その後、日本がドイツでは少しあれだったりもしたけれど、基本右上がりに成長を続けてきたサッカー日本代表の裏方談というか、隠れ原動力とも言えそうな、サッカー好き、もしくはサッカー好きが友達、なんなら友達以上恋人未満な人がいる料理好きにわりとオススメな本です。

これ、巻末に素敵なレシピ群が載ってるので、そこを参考にすると、代表と同じメニューを食べられますね。

世界で大人気な日本代表は

西さんですが、サッカー選手についてのエピソードはこの本ではむしろ少なめですが、闘莉王いいやつとか、俊輔いいやつとか、中澤かっこいいとか、森本よく食うらしいとか、長谷部ペペロンチーノとか、岡ちゃんのお好み焼きとか味噌汁とかいろいろあります、それでも、やっぱり控えめです。
むしろ、日本代表イズ照り焼きアンドラーメン!みたいな逸話が出てきますw
和食ってそれなりに知名度人気があって、西さんは曰く英語はそう得意ではないとのことですが、食や料理はやっぱり、サッカーよろしく国境をこえるし、わかりやすく評価されるものが評価されるのもまたしかりなんですね。わかりやすくて、楽しくて幸せなのは良いことなのです。私もなぜか、2002年ごろにスウェーデンの方と話す機会があって、あの頃を覚えてるひとならわかるんですけど、くるっとまわって、キックして、跳ね返って、アンデシュスヴェンソンと言って、頭を抱えると、一発で仲良くなれるおまじないとかあったんです。
それと同じくというと失礼ですが、西さんは方々でですね、現地のシェフとどう仲良くやるかみたいなことを書いてて、そこはとても面白いです。あと準備に四苦八苦しつつも、それを楽しんでしまうところや、工夫をたくさんして、だいたい成功、ときどき不発みたいな不発なほうも嫌味なく書けるのはすごいなーと思いました。

黄金時代

黄金時代って、過去に対して使う言葉だと私は思っています。そして、サッカーにおいては、戦績で言えば黄金時代はこれからくるでしょう。ManUが来日、ManU相手にヨーロッパチャンピオンズリーグの試合でグラスゴーメガスネイクなFKを決めるがあり、そしていよいよManUと契約しちゃったよ!みたいな一件もありましたし、サッカーでも一流国の仲間入りというのには手が届きかけて、もしかしたら私たちの目の黒いうちに、ワールドカップで優勝とかあるかもしれません。そういう意味では、これからという話は確かにあるんです。

ですが、この本、全体的に穏やかでどちらかというとほんわかしているし、かつ成長の物語なのに、どこか寂寥とした黄金時代感が漂う本なんです。

この本の刊行日と、西さんの出身地、それからJヴィレッジのことを思い起こせば計らずもわかってしまうのですが、これは震災前の出来事で、震災前に書かれています。それが最後の方で、と言っても、本編では触れられていなくてあとがきで出版社の追記があるだけなのですけれど、それがかえって読む方に一抹の切なさを感じさせる本になっていて、おもしろうて…みたいなところがあります。

というわけで、楽しく読むもよし、美味しく読むもよし、切なく読むもよしという、複雑な味わいの一冊なのでした。

では、、良い味わいで、良い人生を。

オシムの言葉 (集英社文庫)

オシムの言葉 (集英社文庫)