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「たまらねぇ場所 築地魚河岸」生田與克 - 有り難い普通が、普通にそろそろまずい

たまらねぇ場所築地魚河岸 (学研新書)

たまらねぇ場所築地魚河岸 (学研新書)

築地の場外に魚河岸野郎っていうお店があって、そちらで売ってたので購入。http://www.uogashiyarou.co.jp/gohan/の人で、魚をさばく―築地魚河岸直伝 (生活実用シリーズ NHKまる得マガジンMOOK)でも、とっても魅力的な生田さん。私はほんとにこのムックのおかげで、しれっと魚を3枚におろしたりできるようになりました。
その半ば自伝、半ば魚河岸のエピソードの紹介、それはもうそれだけで十分面白いです。Steve Jobs が好きな事を仕事にするしかないとスピーチしてましたが、生田さんも好きな事を仕事にしているんだな...と思います。

愉快なエピソードからためになるお話まで。私の父の知り合いにも多いのですが、とくに意味もなく話の前後に悪気がないけど「バカ野郎!!」とかって、ついつい、ほんと悪気がないけど、つい言っちゃう威勢のいい商売の業界の人っているんです。魚屋さんと現場やさんと噺家さんとかお笑いの人なんかはその典型だと、私は勝手に思っています。
その中の代表格が、やっぱり魚屋さんで、その憎めない「バカ野郎!!」の明るいエピソードは、それだけで小気味良いのです。ご本人の、今まで培ってくれて来たこの魚河岸文化への感謝と尊敬が、たくさん詰まってて、業種は違えど、そこは見習いたい。どんな業界でも、いろんな業界が回っているのは、先人達の工夫と積み重ねでやっぱり出来ている。魚屋さんのお仕事ってもう、江戸時代までさかのぼるんだけど、その頃から工夫の知恵の積み重ね、それから、命をいただくからには、おいしく「いただきます」しなきゃいけねぇって姿勢はやっぱり素敵なんだよね。後ろ向きじゃなくて前向きな「どうせやるなら」って、重要なことだよね。

さらに、もう少し視野を広げて魚を食べる文化について話が広がります。魚を食べる文化については、「有り難い」と、漢字で書いた時のニュアンスが本当にぴったり来るなと読んでて思いました。今までは意識してなかったことで、上記のムック本を読みながら魚を切れるようになって思い知ったけど、その「有り難い」のひとつが水。魚をさばく時って水のありがたみを思い知ります、海外旅行に行ったことがあって、魚を自分で切ったりすると本当に日本の水ってすごいと思います。その他にも、日本がいかに「有り難い」環境だったか、地域や人の意識も踏まえて掘り下げます。その「有り難い」普通って、もう少し意識をした方がいいよなって話になります。

そして、もう少し具体的に、消費者や商売のあり方について、適当に売っちゃってた自身の過去への反省と、ヘンなお客さんへの警鐘とを交えながら、もうちょっときちんとやらねぇかい? そして、美味しく魚を食べないかい? となります。

それから、この本、構成がとてもよくて、はじめに色々な方面の魅力を伝えて、引き込みながら、その上で問題点やへんなところを指摘して、もっとこうしようじゃねぇかって話を持って行く流れが素敵でした。

この本だけ読むと、具体性に乏しいとつっこみたくなる人もいるかもしれないけれど、ムック本についてくるDVDやテレビでときに登場する生田さんを見ておくと印象がちがうと思います。おいしいものをおいしく、おいしそうに食べる事って重要ですね。

かっこいい商売人と、かしこいお客さんが増えるのはいいことですよね。そろそろいい加減にしねぇかい? って思わされるところがありますよ。魚好きや、魚屋さんが好きならとてもおすすめです。