"酒は飲んでも飲まれるな"と言う酔っぱらいの自覚 「まぐれ」 ナシーム・ニコラス・タレブ著 / 望月 衛訳
妥協なくおいしいものを詰め込みまくって胸焼けしますが、すごく面白いです。視点を増やす意図としても、面白い読み物としてもおすすめ。本に比べたらこのエントリがあなたの役に立つ確率は2%程度....かなw
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矢野さん:まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか - ハリ・セルダンになりたくて *1
- 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2008/02/01
- メディア: 単行本
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この本はすごい。すごく読むのが速いDanさんでさえ、1時間以上かけて読むのもうなずける...。もちろん、読むのが普通のひとの速度だと、もっとかかります..orz
要約
この著者は毒を吐きまくるけど憎めない / 確率を計算しかできない数学者 / 法定の連中はいまだに物事の結合確率が計算できない / 生きてるだけで、愛 / 黒い白鳥 / シグナルとノイズ / ウィトゲンシュタインの物差し / ここはモナコモンテカルロ 絶対に抜けない!! / 話していて一番イライラするのは、どう行動すべきかを説教する連中 / 問題なのはどうやって実行するか / テレビの音声 / 意のままにならないのは、たった一つ / 幸運を祈る
「酒は飲んでも飲まれるな」と酔っぱらいが言っているときに、その当人が酔っぱらっているかどうかの自覚をわかっていて、回りの酔っぱらいをこき下ろしているかが重要だと思うのだけど、この本はそんな本。自分が酔っぱらいだということを実は認めながら、あいつら馬鹿だよねー。と、伊集院光のようなノリで、斬って斬って斬りまくります。本当に何でもかんでもばっさりです。あげくに自分まで斬ってしまいます。
確率をどう情緒込みで捉えるか
確率的な自称に向き合ったときに私たちがどうなるかが、やはり根底に流れるテーマ。計算は出来る人の例, わからない人の例, そして、わかってても感情を制御できない事を認めた上で、もう神話の登場人物でもないのだから、耳を塞ぐしかないよね、と考える例。それでも吹き飛ぶことがある例。
私たちはただでもあやしい確率のことが、付帯事情こみになると、うまく考えられなくなって、さらに感情が入り込むと、まるでうまく物事をできないから、さあどうしよう?
... ってなる前に、楽しんで読んじゃえばいいと思うこの本です。これが2000円は偉いと思います。翻訳も素晴らしいです。Python クックブック 第2版の翻訳って素晴らしいと思っていたのですが、この翻訳も本当に素晴らしいですね。次いでBlack Swanもでるので、楽しみです。
で、確率の件で変な例を思いついたので、まあ与太だけど、さおだけ屋さんの人の場合は100人に1人無料って言うのは、まあ1%無料ってことですってことだった。
だけど、そんなのはどうでもいい。それより問題なのは、なぜか100人に1人無料ってなったときに、人はもちろん私も含めて、自分があたると思ってしまうんだろう、私たちは確率で物事を考えられるようには出来ていないし、理性はいつだって感情に負けちまう。と、その処方箋には抜群なアイデアがたくさん詰まっています。
それはつまり、100人に99人は無料じゃないんだよ、そして、99%の確率で外れるものが99回連続で外れたからといって、最後の100回目にあたるかよって言ったら、そんなことはないよねぇ。と、こんな具合。これは私の稚拙な例なので、「まぐれ」の中にはもっと乙な例も満載です。O・J・シンプソンとかね...w
楽しい毒舌全開
それから、腹抱えて笑いそうになるのは個人的には4章 ヘーゲルをフルボッコにするところも面白いのだけど、その4章で...
会社の社長について、
言っている事に聞く価値があるか、それとも運がいいだけで今の地位にたどり着いた輩の口から飛び出たナンセンスかがわかる
ための、そんな方法。ちょっと長いけど、面白すぎるので引用。
当社は顧客の利益を追求する / 目指すべき方向 / お客様は当社の財産 / 株主価値の創造 / 当社のヴィジョン / 当社のノウハウ/ 当社は双方向のソリューションを提供する / 当社のこの市場での地位を確立する / 顧客によりよいサービスを提供するためには / 改革の痛みなくして成長なし / 当社は長期的な利益を求める / 勇気と意志を持つ者が勝つ / 当社は技術革新に心血を注ぐ / 社員の幸せが高い生産性をもたらす / 優れたものへのこだわり / 戦略的プラン / 当社の職業倫理
...w
もし、最近耳にしたあなたのボスのスピーチに似すぎていると思ったなら、会社を変わったほうがいい。
orz
万事がこの調子。でも、全体的にはもう少し陽気なテンションで突き進んでいます。難しいけれど、おもしろおかしくね。あとダイエットの話に良くだまされる人は12章を読むといいと思うんだ。
まとめ
もちろん、私も単なる動物で、"必要なのは説教ではなく、もっと下等なレベルの作戦" なのです。そして、このエントリがウィトゲンシュタインの物差しの好例になっていて、それでも反面教師的に人の役に立てるという、幸運を祈る。*2
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「まぐれ」とか、「予想どおりに不合理」とかの系譜の本を勝間さんあたりも書きそうだね。